「速すぎる嘘」と「遅すぎる真実」の損益分岐点

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AIとの10時間の格闘を経て、私が至ったのは「道具の使い分け」という、あまりにも基本的で、しかし最も見落としやすい教訓だった。

現在、私のメインツールはGeminiだ。元々はChatGPTを使っていたが、Google ColabでのPython実行やGoogleアプリとのシームレスな連携という合理性に惹かれ、乗り換えた。

編集作業に追われる日々の中で、私が選んでいたのは「高速モード」一択。AIの回答を待つ数秒すら惜しかったからだ。しかし、あの10時間の泥沼を経て、私はようやく「Proモード」や「思考モード」という別の人格に目を向けることになった。

陽気な「能天気」が背中を押してくれた

初めてProモードを試した時の感想は、率直にいって「苛立ち」だった。遅い。一文字ずつ紡ぎ出される回答を待つ時間は、効率を重んじる身には苦行に近い。

それに、口調が違う。 私は高速モードの、あの根拠のない明るさと前向きさが好きだった。「できます」「簡単です」と迷いなく言い切るあの軽やかさ。なかなか一歩を踏み出せずにいた50代の男にとって、あの無責任なまでの後押しが、どれほど救いになっていたかは否定できない。

だが、今思えばそれは単なる「能天気」だった。

速い嘘か、遅い真実か

難易度の高い要求を彼(高速モード)にぶつけると、事態は一変して泥沼化する。 いくら回答が速くても、中身が「適当な嘘」であれば、その検証と修正に無尽蔵の時間が溶けていく。10時間の格闘で私が支払ったのは、まさにその「速すぎる回答」への対価だった。

皮肉なものだ。 効率を求めて選んだ最速の道が、結果として最も遠回りの「無駄道」になっていたのだから。

ならば、イライラするほど遅くても、論理の裏付けを持つ「思考モード」や「Proモード」を待つ方が、トータルの拘束時間は圧倒的に短くなる。これが、10時間を失ってようやく辿り着いた、現時点での「最短ルート」の定義だ。

三人のGeminiを乗りこなす

もっとも、この新しい相棒たちは気難しい。使い始めると、あっという間に利用制限の壁にぶつかる。

陽気だがたまに大嘘をつく「高速」、 冷静で頼れるが少し動作の重い「Pro」、 そして、深慮遠謀だが驚くほどスローな「思考」。

この三つの人格を、どのタイミングで、どのタスクに割り当てるか。リソース配分の最適化こそが、今の私に課せられた新しい課題だ。

全自動への好奇心はまだ消えていない。 だがこれからは、闇雲に突っ走るのではなく、この三人を冷静に使い分けることで、あの「境界線」の向こう側を覗いてみようと思っている。

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